2017.05.28 07:41

【高知工科大】平和追求する姿勢継続を

 高知工科大学が軍事研究を行わないとする方針を決めた。磯部雅彦学長が先日の本紙インタビューに詳しく答えている。
 大学や研究者が現在直面している「学術と軍事」について明快な方向を示した。危険が迫って軍事的な手段が必要な場合でも、憲法が掲げる平和主義に立って研究を進める、と学長は述べている。そうした姿勢を今後も維持してほしい。
 平和を追求するとともに真理を探究する。研究者は誰もがそんな倫理観と良心の下、日々業務に励んでいるだろう。一方で、研究費の確保で大学や研究者は悩んでいる。
 文部科学省は大学への運営交付金を削減し、科学研究費にもしわ寄せが及んでいる。ところが、軍事に応用できる基礎研究を公募する防衛省制度の予算は膨らみ続けている。当初の2015年度の3億円が17年度には約110億円となった。米軍も日本の大学などの研究者に多額の研究費を出している。
 倫理、良心と資金面をどう両立させるべきか模索している大学、研究者は少なくないのではないか。
 工科大の方針はそうした中で出された。研究が軍事に向かわないようチェックする学内の組織を6月中に新設することも決めた。技術や研究の在り方を巡って警鐘を鳴らしたと受け止めていいだろう。
 いずれも日本学術会議による3月の声明に沿ったものである。学術会議は議論の末、1950年と67年に「軍事研究はしない」と決めた声明の基本方針を継承する声明を今年3月に発表した。
 その中で大学などに対して、軍事関連の可能性がある研究については、適切性を審査する制度を設けるよう求めている。
 工科大の学内組織が判断に迷うケースが出てくることもあろう。民生用か軍事用かの境目は技術革新によってあいまいになっている。
 軍事関連の場合、「自衛目的は許される」とする考え方がある一方で、自衛、防衛を目的としたものと、攻撃目的との線引きが難しい場合があるという。
 その点について学長は、一様に軍事技術とみなさざるを得ないとしている。ただ、問題があれば、その都度立ち止まり、軍事研究の拒否を決めた原点を確認するとともに、検証を重ねるよう求めたい。
 防衛省が研究費を出す予算が、本来の科学研究費として大学に支出されれば、民生用の基礎研究に役立てられることも学長は指摘した。
 日本では、大学などへの研究費の予算が軍事応用可能な内容に偏り、「軍学共同」の動きが強まる恐れもある。基礎研究費が各国で削られることへの懸念もある。そうした流れに、大学や研究者が連帯して疑義を呈する必要もありはしないか。
 高知県立大、高知大は学長らが防衛省の制度への対応を考えていくと表明している。自主性と自立性を大事にしながら、十分議論して方向を打ち出すよう期待する。

カテゴリー: 社説


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