2017.05.20 08:20

【共謀罪可決強行】疑義はむしろ深まった

 「組織的犯罪集団」とは。何が「準備行為」なのか。どう判断するのか―。中身は曖昧なままだ。
 「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案が、衆院法務委員会で採決が強行され、与党などの賛成多数で可決された。
 審議が尽くされたとは到底言えない。「委員会採決の目安の審議時間30時間を確保した」とする与党側の理屈に正当性は見いだせない。法案に対する国民の懸念はむしろ深まったとみるべきだ。
 共謀罪は、犯罪の実行行為がなくても、2人以上で謀議し、犯罪を計画したと司法機関がみなせば、処罰を可能とする。思想、内心の自由を侵す恣意(しい)的な捜査や、市民への監視を強めかねず、過去3度も廃案になった経緯がある。
 「テロ等準備罪」と罪名を変えた改正案も、その本質に違いはない。捜査権の乱用を許す曖昧さが残る。権力の行使は限定的、抑制的でなければならない。
 法案は適用対象をこれまでの「団体」から組織的犯罪集団に限定したとし、政府は「一般の人は対象にならない」と説明する。だが、審議では「目的が一変すれば対象になる」との解釈を示した。これは、捜査機関が「一変」を把握するために、一般市民への常時的な監視を押し広げていくことを想定させる。
 謀議成立の構成要件に準備行為を加え、資金の手配などを例示する。現行法の予備罪、準備罪も例外中の例外とされる。共謀罪はその前の準備段階まで踏み込む。凶器を構えた時点ではなく、購入資金を入手した段階で適用を可能にするが、その資金の調達目的を把握するには事前の日常監視を必要とする。
 2020年東京五輪・パラリンピックに向けたテロ対策を掲げる安倍首相の主張に対しても、参考人質疑で専門家からは「テロ対策は現行法で対応できる」といった疑義も呈された。
 法務省刑事局長は「犯罪の嫌疑がないのに、尾行や張り込みは許されない」と答弁した。では、謀議の端緒をどうつかむのか。大分県警が昨年、選挙違反捜査で政党関係団体などを隠しカメラで盗撮していた違法事件が発覚したばかり。謀議の有無の内偵を名目に、そうした市民監視の手段が拡大され、合法化されかねない恐れも浮かぶ。
 答弁の不安定さが際立った金田法相の適格性も問われる。説明が定まらず、答弁を補佐するため法務省幹部の出席を、与党側が異例の採決で決めるなど議事運営の強引さも目立った。刑法体系を覆す重要法案でありながら、政府は説明責任を果たしているとはいえない。国民の理解が深まるはずもない。
 今国会で法案成立を急がなければならない理由も明確ではない。森友学園問題に続き、安倍首相の友人が関係する学校法人に絡む文部科学省の許認可問題も浮上した。不信が膨らむ法案の前に、国会が優先して解明すべき重大疑惑ではないか。
カテゴリー: 社説


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