安保法制 関連記事



15年9月19日付・夕刊


安保関連法成立に高知県民は…

為政者は都合よく法を解釈/自衛隊のリスク確実に増す
物言わぬけど大多数は賛成/憲法改正を先にやるべきだ

 与野党議員の怒号が飛び交う中で、日本の在りようが大きく変わった。9月19日未明に成立した安全保障関連法。戦争ができる国になる、と批判する人がいる。現在の国際情勢では不可欠、と考える人もいる。この国の行く末を転換しかねない法律の成立に、県民は何を思うか。
 【写真】参院特別委で安保関連法案の採決をめぐり委員長席付近でもみ合う与野党の議員(9月17日)


  ■説明していない

 高知県長岡郡大豊町で農業にいそしむ女性(70)は最近毎日、安保関連法に関するニュースに接してきた。

 「腹立たしい。今国会で無理に通さなくてもいい。(安倍晋三)首相は結局、参院でも丁寧な説明をしていない」

 元中国残留孤児の高知市十津5丁目、石川千代さん(81)は「与党の中にもおかしいと感じる人はいるはず」と言う。

 頭に思い浮かべるのは、国会審議で前面に立った中谷元・防衛相だ。かつて残留孤児らの生活支援に尽力してくれた。県外の元残留孤児からも電話がかかってくる。「中谷先生を憎んだらいかん、先生はいい人だからって」。メモを読むように答弁する姿をテレビで見て石川さんは思う。

 「先生がかわいそう。安倍首相に利用されているだけ。大臣を辞めて早く高知に帰ってきなさいって言いたい」
【写真】「与党にもおかしいと感じる人はいるはずだ」と話す石川千代さん




 安保関連法に関する各種世論調査では、過半数が「憲法違反」「今国会での成立を望まない」などと回答している。国会周辺は連日、万単位の人で埋まった。猛烈な「NO」の意思表示。

 吾川郡仁淀川町大崎で飲食店を営む清永愛一郎さん(68)も「政治家が国民の反応を真剣に受け止めていない」と憤慨する。

 1947年生まれ。終戦後の混乱をうっすら覚えているという。日々の暮らしに苦労していた父母。「為政者は都合よく法律を解釈するでしょ? 気付けば民間人が戦地に赴くことになっているかもしれませんよ」。その先に、幼い頃のぼんやりした思い出が重なるのだという。

【写真】「民間人が戦場に赴くことになっているかも」と話す清永愛一郎さん


  ■中国の脅威

 安保関連法に対する賛否は「右」か「左」か、二極対立で語られることが多い。そうした側面もあるから、土佐清水市の自営業の60代男性は「名前が出ると嫌がらせを受けかねない」として、匿名を条件に取材に応じてくれた。

 「中国など周辺国の脅威は増しているでしょ。尖閣諸島周辺のように(中国に日本の)庭に入られている状態なんですよ。憲法9条を守ってきたから平和だったわけではない。(反対派の人は)日米安保の抑止力(がこれまでの平和に貢献してきたこと)を無視している」

 室戸市室津の多田運さん(75)も“中国脅威論”を根拠に安保関連法に賛成の立場を取る。

 家のすぐ近くには太平洋が広がる。それにつながる南方で中国の海洋進出は進む。

 「日本周辺の環境は変わってきているんですよ。テレビや新聞を見てもほとんど反対の声ばかり。賛成派もいるんだから、均等に出してほしい」

 県民の声を聞く中で、同じような意見を何度か聞いた。先の土佐清水市の男性も「大多数の人は賛成しているけど、物を言わないだけだ」と言った。

【写真】安保関連法案への反対デモには県内の若者も多く参加した(9月18日)


  ■戦争に向かう?

 法案の採決に際し、与党は「議論は尽くした」と説明した。衆参の特別委員会での審議時間は計200時間を超えた。

 しかし、「十分」「不十分」のとらえ方は人によって異なる。

 安保関連法に「反対じゃない」という宿毛市の自営業の60代男性は「第2次世界大戦前とは市民の質も違う。戦争に向かっていくということはないと思う」。

 宿毛市の男性と同じように「どちらかというと賛成」としつつも、その先の見方が違う人もいる。吾川郡いの町吾北地域で写真店を営む山中賢一さん(72)もその一人。

 「自衛隊員のリスクは確実に増える。実際に戦争になれば、政府が『限定的』と言ったとしても額面通りにはならんでしょう。武器弾薬を運ぶのだから。死者も出ますよ」

【写真】参院特別委で答弁のため挙手する安倍晋三首相と中谷元・防衛相


  ■極論ではなく…

 四万十市深木の横山金吉さん(78)は太平洋戦争で父を亡くし、四万十市の遺族会に入っている。遺族会は自民党の有力な支持団体。個人的な思いと断った上で、「自民党は『戦争する法案ではない』と言いますが、戦争に対する恐れが明らかにわれわれと違う。自民党に対し遺族会として、もっと平和に対する要求をするべきだった」と話した。

 その自民党所属の中でも四万十市議の宮崎努さん(48)は明快だ。「法律論から言えば憲法を改正した方がよかった。法律が成立したから良しとするのではなく、改憲論議に早々に持っていくべきだ」

【写真】宮崎努さんは「改憲論議に持っていくべきだ」



 安保関連法に賛成でも反対でもないという高知工科大学3年生の鈴田和基さん(20)が言う。

 「『安保法=戦争法』と決めつける人と、『安保法で日本の安全が強化される』という人。極論がぶつかっていますよね…。二つの考えが交わって考えられないでしょうか」

【写真】20歳の鈴田和基さんは「若者ももっと政治に関心を持たなければ」

 



 


 

 

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