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15年9月18日付・朝刊

高知駐屯地 安保法案可決に自衛隊員や周囲は―

飲食店主「隊員への批判はやめて」

中堅隊員「物申したいことはある」

元自衛官「踏み込みすぎないで」

松崎淳子・高知県立大学名誉教授=中央=ら

 安全保障関連法案が17日、参院特別委員会で可決された。自衛隊員やその周縁の人たちは、いま、何を思うのか。陸上自衛隊高知駐屯地がある高知県香南市から歩き始めた。

 17日午前7時すぎ。

 香南市香我美町の高知駐屯地に、陸上自衛隊第50普通科連隊の隊員たちが雨の中を自転車やバイクで出勤してきた。

 敷地内のぬれた地面では若い隊員たちが腕立てや腹筋、スクワット。叫ぶような「いちっ、にっ、さん」の声がこだました。

 ■激励して送り出す

 香南市赤岡町の国道沿い。隊員が食事や飲み会でよく利用するという「とさを商店」を訪ねた。うどんのつゆに中華麺を合わせた「中日(ちゅうにち)」が名物だ。

 店内に隊員が短剣道大会で優勝した時の写真があった。横には「中日保存会 とさを保存会 名誉顧問 防衛大臣 中谷元」の文字も見える。

 経営者の野村真仁さん(57)は「この1週間は静か。滋賀へ日米共同訓練に行っちゅうきね」と言う。

 「隊員と話はする。でも、政治的な話は一種のタブー。酒飲みながら『死んでも尖閣行く』とか言わんろ。難しいことは聞かん」

 安保法案には賛成、という野村さん。

 「いかなることがあっても隊員への批判はやめてほしい。彼らは政治の決定に従わなければならないんだから。もし彼らが海外に行くことになったら、激励会を開いて『頑張ってきてくれ。帰ったら一杯やろうぜ』と送り出すよ」

 17日午後4時40分ごろ。野村さんが麺をゆでていると、参院特別委員会での法案可決を伝えるニュース速報が店のテレビで流れた。

 ■難しい話はしない

 20年以上も仕事で隊員と接し続ける香南市内の女性も「安保法案には触れない」と言う。

 女性は時々、隊員向けの合同コンパを開く。それが縁で結婚したカップルが7組。親しい隊員は多く、よく酒も飲みに行く。

 「スポーツや趣味の話ばかりで、難しい話題には触れないようにしています。機密みたいなこともあるでしょ」

 安保法案ってどう思いますか。女性に聞いてみた。

 「安倍(晋三)首相は『戦争をしないための法案』と言ってたのでそれを信じます。私の周囲で話題に上ることはないですよ」

 香南市の男性は2週間ほど前、親しい現役の中堅隊員と世間話をした。その中で「安保法案、どう思う?」と尋ねた。すると、隊員は顔をゆがめ、こう言ったという。

 「現場のことを考えていない。物申したいことはある。海外で何かをするために自衛隊に入っていない。災害救助や日本の国土を守るために入ったんだから」

 ■“口止め”

 現職自衛官と連絡を取り合っている元自衛官を訪ねるため、今度は香南市からしばらく車を走らせた。30代の男性。オレンジ色のTシャツ姿だった。

 「『最近、辞めていく若い人が多い。安保法案の関係もあって、親が引き戻しに来る。時代は変わった』って言ってました。そうながや、大変やねって」

 今春、現役との電話でそんな会話を交わした。近況を尋ねただけなのに、相手から「安保法案」が飛び出したという。

 後輩思いのこの元自衛官は法案賛成。それでも思いは複雑だ。

 「どこまでの(活動)範囲か、見当がつかんでしょ? 自衛隊の仕事はあくまで国防。踏み込みすぎないようにしてほしい」

 この取材中、元自衛官は「そんなに自衛隊員の話を聞きたいなら電話しましょうか。○○ちゃんやったら答えてくれるかもしれん」と現役に電話してくれた。

 目の前で、やりとりが続く。

 「言われんということある? いっぱいある? 完全NGか。反対か賛成かもいかんがやね。了解」

 報道機関はもちろん、友人であっても安保法案については何も話すな、と上司に厳命されていたという。

 ■「自分たちは…」

 夕暮れ時。高知駐屯地へ戻り、出てきた隊員たちに声を掛けた。

 「自分たちは答えられないんですよ。(50連隊が所属する第14旅団がある)善通寺の広報で聞いてください。お疲れさまですっ」

 迷彩服の隊員はそう言って家路を急いだ。

【写真】参院特別委の採決をめぐり国会が揺れていた16日夕の高知駐屯地(高知県香南市香我美町)

 


 

 

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