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15年8月22日付・朝刊

中谷氏 安保審議150時間超  「丁寧な説明」国民に響かず

手を挙げる中谷元・防衛相

野党の追及“過剰警戒” 身内の失態も追い打ち

 安全保障関連法案の参院審議が“お盆休み”を挟んで、本格再開した。審議時間は衆院から延べ150時間以上。答弁に立つ中谷元・防衛相は「丁寧な説明」を掲げるが、「政府の説明は不十分」との声はやまない。厳しい追及を警戒してか、“安全運転”に過ぎる答弁が野党の反感を招き、審議が紛糾することもたびたび。首相補佐官の憲法軽視発言など身内の失態も相次ぎ、国民の理解を遠ざけている。

 「質問に答えてない!」「そんなことは聞いてない!」

 参院第1委員会室に野党の怒号が飛ぶ。中谷氏の答弁をめぐって審議が止まり、与野党の理事が委員長席で協議。審議再開後も中谷氏の答弁は変わらず、野党の抗議はヒートアップ―。衆院での審議以降、そんな場面が繰り返されている。

 米艦防護は

 法案審議は参院でも50時間に及ぶが、議論はなおかみ合わない。

 4日の審議。政府が集団的自衛権の行使事例とする日本近海有事での「米艦防護」の議論があった。個別具体の事例から法案の必要性を否定しようとする野党と、日米安保の大枠で論じようとする中谷氏との質疑は迷走した。

 「(日本近海で)米国のイージス艦が単独行動をすることがあり得るのか」。民主党議員が、護衛艦を自前で構えるはずの米艦を日本が防護する必要はない―との観点でただした。

 中谷氏は「日米のシステムを使わないと(日本は)ミサイルに対処できない」「日本の防衛ですよ。米軍がやられた時に何もしないでいいのか」と答弁。ミサイルなどの監視システムを共有化している米軍を守ることの必然性を訴えた。

 ただ、「米軍が1隻で来るのか」との質問に正面から答えなかったため、民主党議員が重ねて追及。見かねたように安倍晋三首相が「1隻で来るわけはない」と答えた。

 日米安保の核心部分だが、議論は米軍が単独行動するかどうかに終始。翌日の審議で中谷氏は与党の質問に答える形で「単独で航行することがあり得ない、とは言えない」と首相答弁を微修正し、うやむやになった。

 「もういい」

 「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国の存立が脅かされ…」

 集団的自衛権の質疑で、野党から「もういい」とやじられながらも、中谷氏が繰り返す「新3要件」の説明。「他国軍を守る武力行使は違憲」と迫る野党側と、新3要件を歯止めに「あくまでわが国を守るための専守防衛で合憲」とする政府の議論は平行線のまま。国民の理解は、「入り口」の段階から進まない状況だ。

 中谷氏は、外交や防衛上の機密、首相答弁との整合性から、具体的例示や断定的見解を制約される事情も抱える。野党から「イエスか、ノーか」を迫られても、明言を避け、議論は再三中断。秘書官が資料を差し入れ、耳打ちする場面が常態化している。

 答弁に窮する中谷氏を遮って、安倍首相が代弁することもしばしば。国会中継をよく見るという高知市内の60代の男性には「大臣が首相に補佐されているように見える。あべこべ」と映る。

 また中谷氏は「法案を憲法に適合させる」意図での発言だったとするが、「憲法をいかにこの法案に適用させていけばいいのか…」との答弁が憲法軽視と批判され、発言撤回に追い込まれたことも。中谷氏の説明能力は与党からも不安視、疑問視されがちだが、追及する野党側からは「政府見解が統一されていない。中谷氏の答弁能力というより、法案に問題があるから答えられないんだ」と突き放す声も聞かれる。

 身内の失態も追い打ちを掛ける。「法的安定性は関係ない」との首相補佐官の発言、自民党若手議員(離党)による法案反対運動への批判…。中谷氏の足元の防衛省からも「取扱厳重注意」の法案関連資料が“流出”し、「文民統制」が問われる事態を招いた。

 中谷氏は取材に対し「誠心誠意、精いっぱい答えている。国民の理解が進むよう努めるだけだ」とする。しかし、世論調査では依然6割以上が今国会での法案成立に反対し、「政府は十分に説明していない」とする国民は8割余り。国民の理解を得るのは難しい状況だ。

  【写真】安保関連法案の審議で、答弁のため手を挙げる中谷元・防衛相(8月21日、参院第1委員会室)

 


 

 

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