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15年7月18日付・夕刊

「民主主義って何だ?」  

国会前デモに押し寄せる若者たち

国会前に押し寄せたデモの人波

 7月15日からの3日間、インターネット上での呼び掛けに呼応して、大勢の若者が国会前に押し寄せた。「当たり前」と思うことと政治が離れていく―。そんな行き場のない不安や疑問をどう表現したらいいのか。若者たちは悩みながら「デモ」にたどり着いている。

 16日午後。

 安全保障関連法案が衆院を通過したばかりの国会前で、プラカードや旗が歩道を埋め尽くしていた。小雨の中、「戦争法案廃案!」「憲法守れ」の大声が一斉に上がる。

 少し離れた広場のベンチで、象牙色のTシャツを着た男性が座っていた。

 「ああいうデモは肌に合わなくて。掛け声、向こうに届いてるのかな」

 29歳。配送の仕事帰りに自転車をこぎ、40分ほどかけて来たという。

 「今、ヤバイって感じはあるんです。でも銀座とかに行けば、みんな楽しそうに歩いてる。家にいるよりは、ここに来た方がましな気がして」

 まとまらない考えをはき出すような話し方。視線の先で人波が揺れる。

 「…もちろん自分も今、一人で何してんだって話で。何か、政治と自分たちが過ごす風景があまりにも離れ過ぎてて」

 デモの最後尾付近で、都内に住む大学2年の男子学生(20)がスマートフォンの画面を見ながら立ち止まっていた。

 「顔がテレビとかに映ったらネットでたたかれるんじゃ、って少し怖いです。友達と政治のこと話すのも抵抗あるんで」

 ネット上ではデモを応援する声がある。同時に「左翼」のレッテルを一方的に貼られ、批判される空気がある。そんなレッテル貼りは帰省先の田舎にもある。

 「だけど」と、彼は言葉をつないだ。

 「憲法も国民も無視する政治はやっぱりおかしい。メディアやネットの文字でなく、ちゃんと生きた人間が反対しているんだって。そう言いたくて来ました」

 夕暮れが近づく。気付けば、授業やこの日の就職活動を終えた学生たちが続々と姿を現していた。

    ■右とか左とか、関係ない

 デモを呼び掛けた団体の一つに、10〜20代の大学生らが今年5月に立ち上げた「SEALDs(シールズ)」がある。ツイッターやフェイスブックで不特定に呼び掛け、大勢の若者らを集めている。

 代表は置かず、支持政党は問わない。もともとは友人の集まりで、2013年の特定秘密保護法制定に反対する活動が前身。参加者が急速に増えたのは最近のことだ。

 人の熱気が増していく路上脇で、初期からのメンバーで明治大の大学院に通う千葉泰真さん(24)が準備を始めていた。

 「もうね、右とか左とか、保守とか革新とか、そういうの勝手に言っててくれって。そんなこと言うのはとっくに過ぎてる。普通の大学生が当たり前の疑問や不満を感じた時、それを声にして上げられる場をつくりたいんです」

 手に持つ配布用のリーフレットには、英文のメッセージが黄色やピンクで鮮やかに配されている。プラカードやホームページもデザインにこだわり、同世代に受け入れられる見せ方を考えてきた。デモの様子は写真に撮り、その場でネットで発信する。

 千葉さんもかつてデモを「ダサい」と思っていた。活動を始めてから、友人に「頭おかしくなったんじゃ?」と言われた時期もあったという。

 「昔の学生運動の反動でこれまでの若者には、政治を語るアレルギーがあったと思う。でももう黙っている場合じゃない。僕ら、市民運動のない社会に生まれたんで。僕らの形で、声をどう可視化できるか、真剣に考えないと」

 いま、何かおかしくない? デモに向かう若者が投げ掛けるのは、そんな率直な疑問だ。

 関西学院大4年の寺田ともかさん(21)は前夜、最終の新幹線に飛び乗り、やって来た。

 「選挙だけで国民の声は見える形で届かないって感じます。小選挙区制は死票も多いし。だから政治家は政策ごとに声を聞かないといけない。今やってること、おかしいですよね」

    ■小学校でも習ってる

 日が落ちた国会前。ライトに照らされた群衆の中心で、SEALDsの奥田愛基さん(23)がマイクを手に声を張り上げる。

 「憲法は守りましょうって、小学校の教科書にも書いてるようなことですよ。だって守るのが法治国家なんだもんって。今、単純に集団的自衛権を使える国よりもヤバイことが起こっていると思ってます」

 夜になり、デモは中心に若者、その周囲を会社員や年配者が取り巻く形に変わっていった。

 「俺はマジでむかついてます」「国民なめてんじゃねえ!」

 体を折り曲げながらの絶叫。交代で壇上に上がるメンバーらは、取材時の受け答えとうって変わり、怒りを全身で表していた。

 一言一言に場が沸き、楽器が鳴り響く。ライブ会場のように映る雰囲気の中、ラップ調のリズムを刻みながら地鳴りのようなコールが始まった。

 「勝手に決めんな」

 「国民なめんな」

 「民主主義って何だ」

 「何だ」

【写真】国会前で叫ぶ「SEALDs」のメンバー。歩道を若者らが埋め尽くした(16日夜)


 

 

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