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15年7月15日付・朝刊

解釈改憲は議会政治の崩壊だ

野中元官房長官に聞く

野中元官房長官

首相は過去を知らぬ

 元官房長官の野中広務氏は、高知県での戦争体験を持つ。陸軍の幹部候補生として高知県内で敗戦を迎え、57歳で衆院議員となった。2003年の政界引退後は福祉施設の理事長を務める傍ら、憲法改正に対する危惧を訴えてきた。7月14日、講演のため訪れた高知市で高知新聞のインタビューに応じ、「(安倍政権による)解釈改憲は議会政治の崩壊だ」と厳しく批判した。講演内容も交えて紹介する。

 野中氏はこの10月で90歳になる。普段、講演は断っているものの、この日は京都から車で5時間かけて来た。「高知で命を救われたから」と言う。

 「坂本龍馬の銅像を前に、戦争に負けた悔しさを、自分の命で晴らそうとしていたのを止められました」

 大阪鉄道管理局の職員だった1945(昭和20)年3月に召集された。米軍の本土上陸に備えた「護土二二七五六部隊」に配属となり、高知県中東部で軍事訓練を受けた。敗戦後は京都府の副知事などを経て衆院議員となった。

 幹事長など自民党の要職を歴任し、「影の総理」と呼ばれた野中氏。20年間に及ぶ議員生活では、自民党の方針にしばしば異論を唱えた。

 米兵による少女暴行事件を機に、今に続く基地問題で沖縄県民の怒りが高まっていた1997年4月。野中氏は、米軍用地特別措置法改正案を審議する特別委員会の委員長を務めており、法案の委員会通過後の委員長報告でこう発言した。

 「この法律が沖縄県民を軍靴で踏みにじる結果になってはならない。私たちのような古い苦しい時代を生きてきた人間は、再び国会の審議が大政翼賛会のような形にならないよう、若い皆さんにお願いしたい」

 引退直前の2003年の夏には、小泉政権下で成立したイラク復興支援特別措置法案に関し、衆院本会議の採決を棄権。イラクに自衛隊を派遣する法案を「自衛隊員が命を落とすかもしれず、他国の人を殺傷するかもしれない法案だ」と厳しく批判した。

     ■  ■

 それから12年、敗戦から70年を迎えた夏。国会では、他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案が、15日にも特別委員会で強行採決されようとしている。

 野中氏は「絶対、国民は(内容を)分かっていない」「(安倍晋三首相らは)焦点を言わない」と強調する。

 安保法案の一番の問題点は何か。そう尋ねると、声のトーンが上がった。

 「憲法改正は手続きが決まってるんです。一内閣が勝手に、手続きを踏まないで解釈変更で憲法を変える。これは議会政治の崩壊ですよ」

 安倍首相は過去を知らん。政治家はもっと歴史に忠実でないとあかん――。野中氏は京都弁でそう指摘し、安倍首相が8月に発表する「戦後70年談話」に「侵略、謝罪、植民地支配の3項目をきちっと入れとかないかん」と力説した。

 「遠い親戚(米国)より、近くの隣人ですよ。韓国や中国、北朝鮮とうまいこといかんと、日本は将来にわたって幸せとか平和とかできっこないんです」

 「70年間、日本は平和憲法の下で戦争をしませんでした。尊い憲法があったから、今日の日本があるんです」

 

【写真】「平和憲法があったから今日の日本がある」と語る野中広務氏(高知市本町3丁目の高新文化ホール)


 

 

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