安保法制 関連記事

安保法案は何を変えるか

15年6月25日付・朝刊

安保法案は法的にアウト、愚策 小林節・慶大名誉教授語る

小林節・慶大名誉教授

 安全保障関連法案の国会審議が続いている。6月22日には、戦後最長となる95日間の会期延長も決まった。自衛隊が海外で他国軍と一体的に活動し、武器や弾薬も届ける―。こうした活動は日本に何をもたらし、私たちの社会をどう変えるのか。4日の衆院憲法審査会に参考人として出席し、「法案は憲法違反」と述べて大きな反響を呼んだ慶応大学名誉教授の小林節氏(66)に、法案の問題点を語ってもらった。(高知新聞社取材)

 実態は戦争参加

 「集団的自衛権の行使や『後方支援』という法制度自体、法的にも政治的にも、そして(米国のように軍事費で財政負担が重くなって)経済的にもアウトです。愚策です」

 国会議事堂近くのビルの事務所で小林氏は語気を強めた。

 「後方支援」とは、海外で米軍などの他国軍向けに弾薬補給や人員・物資の輸送を行う活動を指す。

 「(安保関連法は)最前線で引き金を引くこと以外、全てできるようにする内容です。兵隊の輸送も送迎も、出発する飛行機への給油も、帰って来た兵隊の宿泊提供や治療もできる」

 「『後方支援』は日本独特の概念です。後ろから参加しているだけで、戦争参加以外の何物でもありません。銀行強盗を銀行まで送迎したり、逃げる車に給油してあげたりして、無罪という訳にはいかないのと同じ。憲法9条に完全に違反しています」

 開き直る政権

 イラク特措法などに基づく自衛隊の海外活動も、「後方支援」の名の下で行われた憲法違反の行為だ、と小林氏は指摘する。

 「アフガニスタン戦争では、米軍が敵側の人間や情報の出入りを抑えるためインド洋の海上封鎖をしていました。これに給油した自衛隊の活動は戦争参加に当たる。イラクでも航空自衛隊は『国連職員と物資を輸送する』と説明しましたが、実際は武装米兵を空輸していた。まさに『後方支援』と称した戦争参加でしょう」

 「今までは、特措法で『ちょっとだけよ』と憲法違反をやっていたわけです。安保法案はそれをいつでもやれるようにしている。ひどくなっている」

 憲法学者を中心に法案に反対する声は強い。一方、政権や与党は「法的には違憲かもしれないが政治的に必要だ」と強調する。

 「2014年7月に(集団的自衛権の行使を認める)閣議決定したときから、安倍首相は『丁寧に説明する』と言っていたのに、一度もしていない。どん詰まりまで来て、うるさいな、これで行くんだと言わんばかりの開き直りです。議論以前の問題です」

 憲法を軽視する政治の先に何があるのか。

 「憲法は国民が政治に与えた最高の約束事です。政治が憲法を無視するということは、政治が独り歩きする、独裁政権が生まれる、ということです。第2次世界大戦で、日本は国家総動員法によって憲法を停止して戦争に突入しました」

 「今回の独裁政権は『憲法なんか無視してアメリカを助けるために戦争に行け』と言っているようなものです。これで、悪影響がないと思う人っているのでしょうか?」

  ※   ※  

 安全保障関連法案の焦点は何か。日本はどこへ行くのか。各方面から探る「安保法制は何を変えるか」。随時掲載します。

  こばやし・せつ 1949年生まれ。199年に慶大教授(憲法)、2014年から同名誉教授。弁護士。衆院憲法審査会参考人などを務めた。

 特措法と恒久法 自衛隊はこれまでにも、2001年のテロ特措法に基づき、インド洋で米艦船などへの補給活動を実施した。2003年のイラク特措法でも、自衛隊はクウェートを拠点にして、米軍などに給水や人員・物資を輸送している。

 現在審議中の「国際平和支援法」はこうした時限立法とは違う恒久法だ。自衛隊の海外での「後方支援」をいつでも可能にし、活動範囲も「非戦闘地域」から、「現に戦闘行為を行っている現場(戦場)以外」に広げる。支援できる場所は日本周辺に限らない。

発言録 憲法学者は字面に拘泥/憲法を法案に適応

 ■安倍晋三首相
 「憲法解釈の基本的論理は全く変わっていない。世界に類を見ない非常に厳しい武力行使の新3要件の下、限定的に行使する」(8日、ドイツ・サミットの記者会見)

 ■菅義偉官房長官
 「全く違憲でないという、著名な憲法学者もたくさんいらっしゃいますから」(4日の記者会見)
 「(学者の)数じゃない。憲法の番人は最高裁だ。その見解に基づいて安全保障関連法案を提出している」(10日、合憲とする憲法学者を3人しか挙げなかったことに関し、衆院平和安全法制特別委員会で)

 ■高村正彦副総裁
 「憲法学者はどうしても憲法9条2項の字面に拘泥する」(5日、自民党役員連絡会)
 「憲法学者の言う通りにしていたら、自衛隊も日米安全保障条約もない。日本の平和と安全が保たれたか極めて疑わしい」(9日、自民党役員連絡会)

 ■中谷元・防衛相
 「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけば良いのかという議論を踏まえて、閣議決定した」(5日、衆院平和安全法制特別委員会で。その後発言を撤回)


 
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