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15年5月20日付・朝刊

安保法制で「戦争当事者」

元内閣官房副長官補の柳沢協二さんに聞く 安保法制の影響

米に加担 自衛官死者出る  「イラク派遣がぎりぎり」

柳沢協二さん

 集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案が成立すれば、日本はどう変わるか。小泉純一郎政権下で内閣官房副長官補として自衛隊のイラク派遣に携わり、現在は「イラク戦争は誤りだった」と発言する柳沢協二さん(68)。19日に高知市内で取材に応じ、「イラク以上のことをすれば必ず死者が出る。安全保障関連法案で日本はアメリカの戦闘に加担し、安全は脅かされる」と訴えた。

「お付き合い」

 ――自衛隊の派遣は時限立法のイラク特別措置法などが不要となり、いつでも海外で他国軍の後方支援が可能になる。

 「特別措置法ではその都度、日本の役割を議論していました。法案は、アメリカの要請に応じて自衛隊を展開すること自体が日本のためなんだという価値判断を定着させます」

 「イラク戦争を日本政府が支持したのも『日米同盟を維持するという国益のため』でした。自衛隊派遣はアメリカとのお付き合いという意味が大きかった。アメリカにも地元住民にもそこそこ格好をつけて、とにかく自衛隊を無事に帰ってこさせる。それが前提でした」

 ――当時、アメリカ軍が「対テロ」掃討作戦を繰り返したイラク中部のファルージャなどから離れたサマワを自衛隊の派遣先に選んだ。現地では地元部族の行事に参加するなど融和にも努めた。

 「とにかく犠牲者を出さないように、と。アメリカなどの多国籍『軍』とは違うとアピールし、銃を決して構えなかった。結果、一人の犠牲者も出ませんでした」

使命「無事帰還」

 ――テロはどこでも起こりうる。政府の言う「非戦闘地域」があるのか、という批判が日本国内で強かった。

 「派遣先には、武装勢力と戦うアメリカ軍部隊から離れた地域を選びました。『非戦闘地域』が安全を意味する訳ではありません。自衛隊宿営地にロケット砲弾が撃ち込まれたり、路肩の爆弾で自衛隊車両が破損したりしました。官邸では毎日、治安情報を集める会議が開かれ、派遣部隊の群長交代の度に『君の最大の使命は全員を無事に連れ帰ることだ。無理に仕事をしようとしてはならない』と言い聞かせました」

 「それでも過激派には『アメリカと一体』と見られ、民間人の人質事件も起きた。イラク以上のことをやれば、絶対に隊員に死者が出る。あの時に得た実感です」

ファルージャまで

 ――法案の一つ、恒久法「国際平和支援法案」は、自衛隊の活動範囲を「非戦闘地域」から「現に戦闘行為を行っている現場(戦場)以外」に広げる。

 「分かりやすく言うと、これまで派遣はサマワまでだったのが、(激戦地の)ファルージャまで行けるようになるということです。さっきまで道路を挟んで撃ち合っていた所でも、今は銃撃がやんだから行っていい、となりうる。そこでは、前線部隊への弾薬や物資の補給が求められる。相手から見れば敵部隊の一部です。当然狙われます」

 ――改正される国連平和維持活動(PKO)協力法では、国連が統括していない活動も派遣対象となり、他国軍などの警護を認める。

 「憲法で禁止する武力行使ではないと言いますが、それは日本が考えるだけ。相手にとっては警護も戦闘行為そのものになりうるので、日本は戦争当事者です」

 ――4月、新たな日米防衛協力指針(ガイドライン)が合意された。アメリカ軍との協力を地球規模に広げ、平時から連携を図る内容だ。

 「アメリカは今、過激派組織『イスラム国』への対応や撤退後のアフガニスタンの治安維持に非常に悩んでいます。日本に求めてくるのは、そうした対テロの支援。ガイドラインや安全保障関連法案法案はアメリカに『いつでもどこでも手伝います』とメッセージを送ったことになる。要請が来た時、日本のためでなくても、断れると思いません」

 柳沢 協二(やなぎさわ・きょうじ) 防衛庁で官房長などを歴任し、1996年には日米ガイドラインの策定に携わった。2004〜2009年に内閣官房副長官補を務めた。


 
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