安保法制 関連記事


15年5月15日付・朝刊

安保法案閣議決定で高知県内の自衛隊員家族ら複雑

自衛隊に入隊する高校生らの激励会

 憲法解釈を変えて、集団的自衛権が行使できるとした安倍内閣が14日、それを実行へと移す法案を閣議決定した。国会で可決されれば、自衛隊から「専守防衛」の縛りが実質的に外れ、アメリカ軍などと世界中で活動できるようになる。戦後の日本が築いてきた「平和主義」のかたちを変え、隊員の危険も増しそうな内容に、若者たちを自衛隊に送り出してきた高知県内の父母や高校から不安の声が漏れた。

 ちょうど2カ月前の3月14日。高知市内のホテルで、自衛隊に入隊する高校生ら約100人とその家族を囲む「激励会」が開かれた。

 首長や国会議員に交じり、自衛隊への就職に関わった高校や専門学校の代表者たちも来賓として招かれた。

 公務員への就職を支援する高知市の専門学校代表も激励会に参加した。専門学校の講師は「警察や消防を目指す子が、公務員の延長として入隊することが多いんですよ」と言う。 その際、ほかの「公務員」との違いをどう伝えているか。

 「受験対策として、政治の授業で集団的自衛権や安保法制もきっちり説明してます。戦地に行く可能性がある、覚悟を持って行きなさい、と」

 高知市内の公立高校の進路担当教員は、自衛隊の依頼で募集説明会の案内を教室に張っている。

 「リスクは説明するけど、資格が取りやすく、警察や消防よりは倍率が低いというメリットも…。最終的には自分の人生、個人の判断と思いますし」

 別の学校の進路担当は「子どもに説明するかどうかの議論は(教員間で)ない」。

 激励会の式典の来賓には、児童福祉施設の関係者もいた。ある施設には数年前から、自衛隊の募集担当者が卒業を控えた高校生を勧誘に訪れている。

 最近、説明を聞いた複数の高校生は「お金をためたいから」と入隊した。施設の代表は「自衛隊員になるという意味、法改正の動きを知った上で決めて、と言い聞かせましたが…。親心としては、正直、不安です」。

   □   ■

 「自衛隊活動をこれだけ変革するなら、もう『安全だ』とは言えない。専守防衛だ、主に災害救助だ、と説明しても、まやかしに聞こえてしまう」

 こう話すのは、元航空自衛隊幹部で、前高知県長岡郡大豊町長の畑山正親さん(76)。全国OB組織「隊友会」の参与で、自衛隊の担当者と一緒に町内の若者を勧誘したこともある。

 航空自衛隊時代、募集課長として人材確保に奔走したり、部下をカンボジアの国連平和維持活動(PKO)に派遣したりした。

 「今後は軍隊的な仕事が増えてくるでしょう。勧誘用に、防衛省の統一的な説明資料が必要です」

   ■   □

 隊員を見守る家族の心境はさらに複雑だ。

 「危ない所に行くようなら辞めたら?」

 高知県東部の30代男性は以前、弟の隊員にこう勧めた。「『辞めてもほかに仕事がない、自分は行く』って。まだ実感がない部分もあるのでしょう」と言う。

 高知県中部の70代女性は過去に息子が海外に派遣され、「命の心配をどっさりした」と振り返る。今回閣議決定された法案は、当時よりも自衛隊の活動を地理的にも内容的にも格段に広げる。「もう危険な任務には就かんといてほしい。けど、行けと言われたらしょうない。息子にも生活があるし」

 一方、親子2代で隊員という県中部の60代男性は「法整備は当然のこと」と言い切る。

 「本人が行くなら止めん。覚悟もしちゅうき。税金から給料をもらって、宣誓書にも署名したがやき」

   ■   □

 高知県内の自衛隊員の一人は高知新聞社に「上官に『取材に答えるな』と言われてるから」と言葉少なだった。

 自衛隊高知地方協力本部は、高知県内市町村で18歳を迎える全ての若者について、氏名や住所などの情報を入手し、それを基に募集の手紙を出すなどして採用を進める。

 「安保法制の動きに合わせ、募集の際の説明を変更するか」―。高知新聞社の質問に防衛省報道室は14日夜、「法成立前なので具体的には言えないが、活動が正しく理解されるよう説明する姿勢は変わらない」と回答した。

  【写真】今春、自衛隊に入隊する高校生らの激励会(3月14日、高知市内のホテル)


 
総カウント数
本日は
昨日は

 ・「安保法制 関連記事」次の記事へ
 ・「安保法制 関連記事」トップページへ
 ・高知新聞フロントページへ