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南海地震

―― 視点  国際高等研究所所長 尾池和夫 ――

木の家耐震改修大勉強会 南海地震を正しくこわがる

 高知新聞社は、「国際森林年」記念行事で「木の家¢マ震改修大勉強会in高知」を開催した。午前中は仕事人向けの勉強会、午後は一般向けの勉強会で、私も地震の仕組みを話した。この会で、高知の人たちは幸せだと思った。理由を以下に列挙したい。

 まず、開会の挨拶(あいさつ)である。野田総理のメッセージ、高知新聞社長、尾ア知事をはじめ数人の挨拶が実に的確であった。知事は、南海トラフに予測されている巨大地震を最新の知見で表現し、しかも会の最後まで参加されたのである。

 次に会の主題の「木の家」である。台風や地震などの自然現象が起こる日本列島では、他所(よそ)から持ってきた木でなく、土地で育った木で家を建てると、そこの強震動や大風に強い家ができる。土地の自然に耐えて育った木が強いのは容易に理解できることである。

 樹齢50年の杉の林が台風のたびに倒れて被害を拡大し、斜面がすべって川を埋める。同じ深さに根を張っている林は滑りやすく、そのような林を利用することが喫緊の課題である。高知県は地元の多くの杉を活(い)かして地震に強い県になることができる。

 高知県には前回の南海地震をよく覚えている人たちがいて、そのときのことを話してくれる。次にやってくる南海地震は昭和の地震より、はるかに大きな規模になる可能性があり、場合によってはマグニチュード9・0に達するかもしれないということが、最近の海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究から判明している。それに備えるため、経験を学ぶだけではなく、科学の成果を活かすことが減災のための切り札になる。古老の言い伝えだけでなく、その上に科学を加えて、高知の人たちは勉強を続けることができるのである。

 JAMSTECでは、南海トラフ近くの海底で「ちきゅう」が深層までボーリングして、持ち帰ったコアを世界の研究者のために高知コア研究所に保管し、世界の科学者がやって来て研究する。また、JAMSTECは、海底に大規模な観測ネットワークを設置して、リアルタイムでそのデータを解析する。そして、きっと次の南海地震の時には、地震に至るまでの時々刻々の地球の情報を、高知県民に送り届けることになる。

 さらに、高知県には室戸ジオパークがある。海溝軸の近くにあって南海地震で隆起する現場が、今年世界ジオパークネットワークの仲間になった。これを活用し、変動する日本列島の大地の仕組みを学んで、震災の軽減に役立ててほしいと私は願っている。

 これほど完備した巨大地震を迎える体制は、世界で唯一、初めてであり、高知県ほど幸せな土地はないと言えるのである。それを活かすかどうかは高知県民が学習して、その情報を活かす知恵を持つかどうかにかかっている。情報が与えられても、家を強くしなければ、また、海辺にいて大揺れを体感したとき高い場所に避難しなければ、何の役にもたたない。南海トラフの巨大地震まで、まだ学習して備えるための時間が残されている。

(2011年10月16日付朝刊掲載)

 ※筆者の了解を得てホームページにも掲載しています。
 
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