
MTV以前のロックとアート
「カルト・ロック・ポスター集1972―1982」ロジャー・クリムリス&アルウィン・W・ターナー/ブルース・インターアクションズ=写真。
1981年のMTVのスタートとともに始まった、プロモーションビデオの時代。それ以前の70年代、ポスターやレコードジャケットといったアートは「ロックをどう伝えていたか」を、200枚以上の資料を用いて教えてくれるのが本書である。
中性的なメークを施したデヴィッド・ボウイ、マーク・ボラン―飾り立てたロックスターの姿を前面に押し出したのが、グラムの時代。それはニューヨーク・ドールズまでも「メンバー全員化粧」というフォーマットでジャケット写真に封じ込めた。
そしてパンクの時代がやってくる。切り刻まれたユニオンジャック。裂け目に止められた安全ピン。脅迫文のような文字タイプで「SEX PISTOLS」のバンド名―今も受け継がれる技法がポスターに使われ始める。
こうした「イメージ戦略」だけでなく、アーティストの「意思」も伝えてくれる。
ザ・ポップ・グループ。ダブ、ファンク、クラウトロックを原点にした音楽に、彼らの込めた「怒り」。それがデビューアルバム「Y」のインナーに見事に表されている。傷ついた市民、武器を持った幼い少年…陰惨な世界の写真のコラージュ。そう、悲劇を生み出し続けてやまない政治に向けた怒りを。
ジョイ・ディヴィジョンの自主製作盤のポスターは、幾何学的に組まれた建設現場の足場をモノクロで撮った写真。それは後に「ブルー・マンディ」の無機質なビートを生み出す彼らの、すでに宿していたインダストリアル志向を教えてくれている。
2007年7月7日付・夕刊

・音楽の世界の 広さと深さ(2007年6月2日付・夕刊)
・ダンス音楽 漂流の歴史(2007年4月14日付・夕刊)

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