▼下 対話路線 問われる「連携」の質
県知事、高知市長の同時選挙が終わった翌二十六日朝。新知事に決まった尾ア正直氏(40)は、再選を果たした岡崎誠也高知市長を市役所に訪ねた。
「お堀を物理的に埋めるのは無理ですが、心理的な面は埋めていきたい」
県市連携の意欲を伝える尾ア氏に、岡崎市長は“後輩”を迎えるように「頻繁にトップ会談を開きましょう」。県と高知市の両トップが握手する姿は、県都のみならず、県と市町村
の新しい関係を予感させた。
【写真】初当選の翌朝、岡崎高知市長=左から2人目=を訪ね、市長室で幹部に挨拶する尾ア氏(左端)。「歴史的瞬間」となった(26日午前)
■歴史的瞬間
「知事はオザキ、市長はオカザキ!」。今回のダブル選で、尾ア、岡崎両陣営は高知市内で共闘を繰り広げた。
同じ四党相乗りの背景があってこそ実現したが、知名度不足の尾ア氏が「最大票田の県都で効率良く浸透させたい」と岡崎氏を頼った形。尾ア氏が掲げた「対話と実行」に沿えば、保守県政と革新市政、昭和のイデオロギー対立から久しく消えない「県市の溝」解消もアピール材料だった。
橋本―松尾時代にも雪解けが期待され、病院統合なども実現したが、その両トップも二度の知事選での激突が示す通り、県市が心底交わることはなかった。
岡崎市長も一期目で「大事な点は(橋本知事と)意思疎通してきた」とするが、ぎくしゃくした事例は依然として目立った。県が一昨年、突然打ち出したJR高知駅前複合施設構想も、市には寝耳に水だった。
それだけに尾ア氏の早々の市長訪問に、市幹部は「転機」の思いを強くする。「歴史的瞬間。歴代知事が市長室に足を踏み入れることはなかったから」
■首長の期待
尾ア氏は高知市以外の地域回りでもまず市町村長を頼り、「対話と実行」の姿勢をアピールした。
県内の地域の実情に疎く、短期間での知名度アップを迫られた尾ア氏がそうせざるを得なかった面はあるが、陣営幹部は「もちろん当選後の県政運営を見据えていた」と語る。
「橋本知事の功績は評価するが、個人的に腹を割って話せたことは一度もなかった」「橋本知事が役場に来てくれたことはなかった」。橋本知事との距離感を感じてきた首長側も「対話」を歓迎した。
「橋本知事は良くも悪くも『孤高』。市町村と一緒に動くことも少なかった。国への陳情で知事の看板が欲しい時が何度あったか。今後は国会議員も含め、県が一丸となれるのでは」。ある首長は期待感を示す。
政党、議会だけでなく、市町村との関係でも醸成される結束・協調ムードだが、当選が決まった夜、推薦した連合高知の岡林俊司会長はあいさつで念押しした。「新知事を周りがつつき壊さんように」。新知事を迎える県幹部も「知事の“八方美人”が過ぎたら、県政はがんじがらめになる」と不安を漏らす。
「対話路線」の中に緊張感を保ちながら、どう実を挙げるか。対立から協調へ。県民は新県政の「対話と実行」を注視している。
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