▼4 レジーム 各党に迫る憲法論議
追い詰められた地方は、全国で自民党を惨敗させ、民主党を躍進させた。「地方の反乱」は参院での与野党逆転を成し遂げ、その喧騒(けんそう)が続く投開票日の三日後には、県庁で橋本大二郎知事を大勢の報道陣が囲んだ。知事は「次の知事選には出馬しない」。そして、国政への転身を示唆した。
【写真】先の参院選で立候補者の訴えに聞き入る有権者たち。格差社会の中で民意は揺れている(7月、高知市内)
「国との壁」
「全国の地方の住民が『国全体のバランスがおかしい』と思い、国との大きな壁を感じていることが分かった」
橋本知事は去就の判断材料の一つとした今参院選をそう受け止めたという。年金問題などへの政権批判という「時の風」が勝敗を決したことは間違いないが、知事の言うように、その風の下に「格差」という地方の疲弊が横たわり、「国と地方の壁」がそびえ立つ。
ただ、「民意」が望ましい国政の形を見定めたとまでは言えそうにない。県選挙区では、自民党候補の得票が郡部で民主党候補を上回った。そこに「時の風」と「格差」の現実との間で揺れる民意が見て取れる。
「地方を締め付ける国の構造改革路線は絶対に許せんが、地方が国から予算を取るためには政権与党に頼るしかない。田舎では存在すら見えない民主党に政権担当力があるとはまだ思えない」
中山間のある町長が「格差」の現実の中で定まりきらない思いを漏らす。
一方で、ある市長は「地方の声で国政が変えられるということがはっきりした」と二大政党化の流れを歓迎しながら、「政権党は地方の声を聞かざるを得ない状況になるだろう」と指摘。「国との壁」を壊す糸口を見いだそうとする。
一時凍結
先の国会で憲法改正手続きを定めた国民投票法が成立し、安倍政権は改憲へ向け大きく踏み込んだ。今回の参院選では憲法改正を掲げて「戦後レジーム(体制)からの脱却」を争点化させようとしたが、年金不信などの風に追いやられ、護憲を掲げる政党も軒並み議席を減らした。
共産党は県選挙区で得票を伸ばせず、比例代表でも元衆院議員の春名直章氏(48)の国政復帰に失敗。社民党も県内比例票を三年前より四分の一以上も減らし、両党とも退潮が一層顕在化した。
改憲の動きが目の前に現れないと存在感を発揮できないのは皮肉だが、「平和の党」をうたう公明党も連立政権の枠の中でジレンマを抱える。
「支持母体の創価学会は平和を重んじる。改憲や個人負担を推し進める自民党との連携に動揺が出た」。党県本部の幹部は県内で比例票を減らした背景をそう分析する。
大敗した自民党の改憲熱は一時的に冷めるという見方もある。が、三年後には改憲案の発議が解禁される。不断の憲法論議がなければ、時々の政党間の駆け引きに国民が不用意に巻き込まれる恐れが大きい。
国政は参院が政局の鍵を握ったが、県政は橋本知事の退任表明でたちまち今秋の知事選が焦点に。民意の所在を既成政党がつかめるかどうか―。国政、県政それぞれのレジームを問うべき次の戦いはもう動き始めている。
=おわり=
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