▼5 投票行動 分岐点刻む国民審判
「参院選は政権選択選挙ではない」。小泉純一郎前首相は三月、参院選で与党が敗北しても退陣する必要はないと安倍晋三首相に助言した。
憲法は衆院に、参院に優越する権能を与えている。首相指名もそうだし、予算の議決もそうだ。その上で二〇〇五年の郵政解散・総選挙は、衆院与党に三分の二以上という「数の力」をもたらした。憲法の規定上は、参院で否決した議案がことごとく衆院で生き返ることになる。
□政権直撃□
前首相の言葉には、「郵政民営化ノー」という参院の意思を無視して衆院を解散し、成功を収めた自負心がのぞく。だが、八九年参院選で自民党が惨敗、過半数割れして以降、参院選は「政局」をつくり出す舞台となってきた。
消費税導入などの影響を受けた八九年の大敗では、女性問題も引きずった宇野宗佑首相が引責辞任し、その後の自民単独政権の崩壊に連なっていった。九八年には経済失政への批判で敗北、橋本龍太郎首相が退陣に追い込まれた。
年金不信、格差、「政治とカネ」、そして安倍政権の支持率急落。今回の参院選では、“波乱の再来”があってもおかしくない要素が並んでいる。県内の与党関係者も世論の反応に神経をとがらせ、野党は有権者の不満を得票につなげようと躍起だ。
ところが、前哨戦真っただ中の現場からは、こんな声が漏れる。「県議や市町村議の動きが鈍い」「支持者にも疲れが残っている」―。
□「亥年現象」□
「亥(い)年」の今年は十二年に一度、春の統一選と夏の参院選が重なる「選挙イヤー」。地方議員は自らの選挙を終えた直後で参院選の支援に力が入らず、有権者も選挙疲れを引きずって投票率が落ち込む―。
「亥年現象」と呼ばれる投票率低落の傾向が指摘されるが、それは県選挙区の過去の投票率の推移にも顕著に表れている。
二十四年前の亥年、八三年の参院選は61・27%と落ち込んだ。その三年前の八〇年から11ポイント余りの大幅ダウン、逆に三年後の八六年は11ポイント近くアップする。十二年前の亥年の九五年は50・64%で最低を記録している=グラフ参照。
本社世論調査では、急拡大する年金不信や格差問題で今回の参院選に対する県民の関心度は高まっているが、亥年の特異な投票傾向が今回も当てはまるのか、それとも―。
◇
憲法改正の手続きを定めた国民投票法が、今国会で成立した。投票できる年齢を「十八歳以上」に拡大する一方、一定の投票率に達しなければ無効とする「最低投票率」の規定は条文に盛り込まれず、その是非の検討が先送りされた。
国民投票で過半数の賛成があれば、改憲案は承認される。条文のままなら、仮に投票率が40%程度であれば国民(有権者)のわずか五分の一の意思で、国の最高法規を変えられることになる。
参院議員は任期六年。今回の改選組は、改憲案の提出・審議凍結期間が解ける三年後も在籍する。つまり、今回の参院選は「戦後初の改憲作業にかかわる議員」「憲法の行方を左右する議員」を選ぶという、これまでにない側面を伴っている。
有権者の投票行動が、この国の分岐点を刻み、「国家」に対する民意の熟度が試されることになる。その選挙まで、あと一カ月余り――。
=おわり=
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