▼5 合併新市 広がる「中核」の役割
県都が膨張している。平成十年に県から大幅な権限移譲を受けて中核市に移行し、十七年一月には旧土佐郡鏡、土佐山両村を合併して新市に再編。来年一月には吾川郡春野町を編入してさらにスケールアップするが、それは同時に県都が果たすべき役割の拡大も意味する。
【写真】旧土佐山、鏡両村との合併セレモニー。県都が果たすべき使命も拡大している(高知市役所)
■恩恵
「役場に人が減った。それが寂しい」。鏡、土佐山両地区にある分庁舎の職員が一番耳にする住民の声だ。両庁舎で働く職員は合併で約四割減。年間売り上げが半減した庁舎近くの店もある。合併の狙いだった組織のスリム化で「周辺部」が衰退する構図があるのは否めない。
一方で、合併の恩恵が見えないわけでもない。「道路などハード整備は、財政難と言いながらも予算規模が大きいから融通が利く。配慮してくれている」。旧鏡村職員は合併のスケールメリットを評価する。
市幹部も住民対応や政策の積み上げ方など旧自治体間の「体質」の違いを指摘しつつ、合併の“アメ”といわれた地方交付税配分の水準維持や合併特例債などを「財政的なメリット」と前向きにとらえる。
「都市と中山間の共生」をテーマに掲げた合併によって、市職員や市民が参加する「こうち森林救援隊」も発足。鏡川源流域で間伐や地域住民との交流活動も始まった。会員は約百五十人に膨らんだ。
「中山間や水源地域に目が向くようになった。確実に都市の“懐”は深くなっている」。メンバーの旧高知市職員は市民生活を支える川上への意識の広がりを期待する。
■いいとこ取り
来年一月に合併する春野町は市の南側に開け、県内有数の園芸地帯を持つ。調印まで曲折をたどったが、この合併で双方が強調するのが園芸と都市政策の結び付きだ。
春野町の農業関係者は生産地と消費地の「距離」が縮まることに期待を寄せ、高知市側も学校給食での地産地消の普及や、春野町の園芸産品と同市の食品加工、販路開拓のノウハウを融合させた「一・五次産業」の振興に意欲を高める。
水面下では、春野町の土地利用の規制緩和への待望論が見え隠れする。表だった議論はまだないが、高知市側には「春野の平野部は大きな魅力」と産業団地などの開発を期待する声があり、春野町側でも現状の厳しい土地利用への不満がくすぶっている。
周辺自治体の吸収で市勢を押し広げようとする県都。だが、合併の利点を強調すればするほど、冷ややかな目も向けられている。過疎化が著しい嶺北地域との合併を早々に“見切った”高知市の「いいとこ取り」に対する批判だ。
春野町合併後の高知市の人口は約三十五万人、県全体の45%近くを占めることになる。一県一都市構造で県内各地から人を吸い上げてきた中核都市には、「県全体の底上げ」という自覚と使命が強く求められる。
県都のかじ取りは、高知市の枠だけで収まらない時代になっている。
=おわり=
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