▼5 構図確定 消えた“対立の流れ”
自民党県連が元財務官僚の尾ア正直に寄り掛かっていく中で、浪人の身となった同党の前参院議員田村公平が動くことはなかった。
だが、自民党県連には過去二回の知事選で推した前高知市長の松尾徹人、また民主党県連には参院議員の広田一が、それぞれ意中の「外」に気掛かりな存在として残っていた。
【写真】4党相乗りの構図を批判した橋本知事も後任には「安心・安定」を求めていた(10月30日、県庁)
▼失望、動揺
橋本大二郎に連敗した松尾にはなお同情論が根強く、三十九歳の広田の周辺では「いつかは知事に」という期待感もくすぶる。何より二人には抜群の知名度という優位性があった。
十月に入ると、やはり動きが表れる。今は老舗ホテルの社長に納まっている松尾に対し、企業経営者らが十日に「出馬を願う会」を結成、署名活動を始めた。
三日後。既に尾ア擁立を固めていた自民党県連会長の山本有二が、松尾に電話で方針を伝える。自重を促す含みもあったが、これに松尾が返した言葉は「彼(尾ア)の何を評価したんですか」ととがった。その夜、五千人近い署名を受け取った松尾は「強く心に響いた」と応じる。
やぶ蛇をつつくような結果に慌てた山本は、松尾に近い高知市議とともに松尾を囲み、言葉を足した。尾アも帰高後すぐ松尾の下に足を運んで礼を尽くす。松尾は結局、二十日に不出馬を表明するが、「政党関係者も心が離れた」というコメントの一節に自民党への失望を強くにじませた。
一方の広田。当初から「議員の職責を果たす」という言葉は繰り返していたが、広田支持の県議もいる県議会会派「県政会」から出馬要請文を受け取った際には「後援会と相談する」と含みを持たせ、その申し入れは民主党代表の小沢一郎らに報告した。
さながら民主党に判断を委ねるような展開で、最後は同党幹事長の鳩山由紀夫に「(広田は)参院に必要」と県政会に断りを入れさせた。広田は「要請に誠意を持って対応するため」と説明したが、十月八日夜には民主党県連幹部から尾アの名を聞き、動揺する姿を見せている。広田の目に「突然現れた同世代のライバル」と映ったとしても不思議ではなかった。
▼雪崩
「松尾が出たなら、広田も打って出たろう。松尾は橋本の旧敵。広田には『橋本の代理戦争』という大義名分が立つ」
県庁周辺で流れたこうした見立ては、そうなれば橋本県政の下で交錯した対立の流れが続くことを意味したが、二人は線上から消えた。それを見定めるように、共産党以外の県内四党は尾ア推薦で雪崩を打つ。
尾アが出馬表明した十九日に民主党県連がすぐさま決定。二日後には自民党県連が役員会での方針確認で続いた。「自民党との相乗り禁止」が党是の民主。だから民主が先に…。両党県連間で“意思疎通”が図られた形跡が色濃い。
四党相乗りが出来上がった後の三十日。意中の人・十河清(県政策企画部長)へのバトンタッチを事実上断たれた橋本は、記者会見で「中立の立場を貫く」と表明。同時に政党の相乗りを批判したが、知事と議会の長い対立の後で橋本が訴える「安心・安定」も、四党相乗りで目指した「県民党」も根は同じ。ただ最後は、それぞれの「意中の人」が変わっていた。
=おわり=
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