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2007年03月23日


遺族に残る学校不信 学芸高上海列車事故

 昭和63年3月、中国への修学旅行中の生徒27人と引率の教諭1人が犠牲になった高知学芸高校(高知市槙山町)の上海列車事故から19年となる24日午後、同校は20回目の慰霊式を行う。例年の参加者は350人程度だが、節目と考えて1000人規模に拡大、中国の駐大阪総領事らも出席予定になっている。しかし遺族の中には今なお、学校への不信感がぬぐえず参加を拒否する親や、慰霊式には参加するものの学校に依頼されたあいさつを断った親もいる。

 「桜が一番嫌いな花になってしまった」と遺族の一人、中田喜美子さん(59)=同市寿町=は言う。事故で二女、恵子さんを失った。なぜ事故が起きたのか。なぜ娘が巻き込まれたのか。先生は事故後、なぜ現場を離れたのか。ずっと問い続けてきた。

 「『行ってくるわー』と言って出た子どもを、こんな姿でかえしてきて怒らない人はいない。わたしは娘が即死であってほしいと思ってきた。せめて長く苦しまなかったと思いたかった。でもそうじゃなかった」と言う。

 「学校の先生はちゃんと調べもせず『圧迫死ですよ』と、さも知ったように事実じゃないことを言う。本当はどうだったか、親は必死で調べるんです」

 事故当時、学校も校長も大変だという雰囲気がつくられてしまった、と振り返る。

 「わたしたちは学校に子どもを託したのに、学校も被害者になってしまった。事故直後、共同通信の人が『こんなコース、中国を知っている人は絶対に組まない』と言っていた。そんなコースに子どもたちを連れて行き、しかも下見らしい下見もしていなかった」

 この19年間、学校への不信は膨らみ続け、しぼむことはなかった。慰霊碑に娘の名前を入れることを拒み、慰霊式にも出る気にはなれない。

 「わたしは学校から謝罪をされたと思ってません。中身が伴ってないからです。学校がきちんと事故について考えることを放っておいて、新任の先生に何を伝えていますか? 中身のない慰霊祭をして何になりますか?」

 同校によると、20回目の慰霊式には19家族31人の遺族が出席する。全遺族が参列しないことについて、元遺族会会長の矢野美城雄さん(63)=同市瀬戸東町3丁目=は「遺族がすべてそろうのが本来の姿。全員そろわないのはこれまでの学校の遺族へのケアが十分でなかったためだ」と話す。

 矢野さんは長女の裕美子さんを亡くした。同校OBだったこともあり遺族会会長を務めた。

 今回、学校側から遺族を代表してあいさつを頼まれたが、断った。「遺族の思いがまとまらず、28家族がそろわない中、いったい何を話せばいいでしょう」

 矢野さんの誕生日は、裕美子さんの命日の24日。「桜が開花するころ、多くの人は希望を持って明るくなるでしょう。ところが私は気分が暗くなる。これが19回も続いているんです」と静かに話した。

 また長女の真砂恵さんを亡くした遺族会元副会長の坂本源一さん(63)=南国市後免町=は、「対中国では学校も被害者だが、生徒と保護者に対して学校は加害者だった」と指摘する。「(学校側には)加害者としての当事者意識が欠如というより、なかった。変な言い方をすれば、時がたち、嵐がやめばすべて遺族が忘れてしまうと思っているんじゃないか」と疑問を投げかける。

 これまでは「子どもを入学させた以上、学校によくなってほしいという気持ちがあった」という坂本さん。慰霊式の方法なども含め学校に注文を重ねたが、「その思いは結局、20年間伝わらないまま過ぎたかもしれない」と話した。

 【写真説明】平成2年に建立された慰霊碑。後ろの壁のプレートには、亡くなった生徒たちの名前が刻まれているが、3遺族は拒み、名前が入っていない(高知市の高知学芸高校)

 上海列車事故 昭和63年3月24日、修学旅行中の高知学芸高校の生徒を乗せた列車が上海郊外で衝突事故を起こし、生徒27人と引率教諭1人、中国人1人が死亡した。現場は列車自動停止装置のない単線区間(現在は複線)だった。翌年2月、遺族の一部は学校の安全義務を追及する訴訟を起こすが請求は棄却。しかし判決は「学校として必要とされる事前調査を尽くしたとは到底言えない」などと学校側を厳しく批判した。平成2年、同校は「永遠の碑」(とわのいしぶみ)を建立。犠牲になった生徒の名が刻まれたが、学校に不信感を募らせる3遺族は名前の記入を拒んでいる。

 
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