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小松カーブ切れた!
2点ビハインドの三回。一死一、三塁のピンチで「ピッチャー、小松」。高知商投手交代のアナウンスが響いた。明徳義塾との県大会決勝を思い出させる緊急登板だが、ここは甲子園。4万人の大観衆の歓声が球場を揺らした。
それでも、背番号10ポーカーフェースの2年生は、「いつでもいけるよう準備はしていましたから」。平常心を失ってもおかしくない場面でマウンドに上がり、最後まで投げきった。
カーブが面白いように決まった。四回は、ここまで2安打2得点の1番中野に対し、カーブで二つファウルさせてカウントを稼ぎ、最後は外角低めのストレートで空振り三振。両チーム通じて初の三者凡退につなげた。五回こそ先頭打者に二塁打されて1点を失ったが、六回以降は先頭を切って取り、ラスト2回を計6人でピシャリ締めた。
「小松がしっかり投げてくれたのが大きかった」と西原監督が言うように、じわり差を詰める打線の力を引き出したピッチングだった。
球種は直球とカーブだけ。苦心のリードを続けた捕手山下の力も大きかったが、「開き直って投げられた」と小松。気持ちで負けなかったのが何より大きかった。昨秋の四国大会でカーブが決まらず直球を打ち込まれ準決勝でコールド負け。「あと1勝」でセンバツ出場を逃した惨めな姿はもうなかった。
同じ北北海道代表と対戦した9年前。1点リードの四回からロングリリーフし無失点で勝利に貢献したのは当時2年生の藤川球児(阪神)だった。もちろん今、比較できる投手ではないが、2回戦で涙をのんだ「先輩」の無念を晴らすチャンスをつかんだのは、小松の右腕だった。「次もいい投球がしたい」。166センチの「後輩」がやけに大きく見えた。(山崎道生)
【写真説明】3回途中から登板、4回以降、白樺打線を1点に抑えた高知商小松の力投
「足」「目」さえ好機生む
二回の守りを終えて0―4。その裏2点返しても、直後にまた2失点。流れを取り込めない嫌な展開を、高知商は「したたかさ」でひっくり返した。
2点を追う六回。この回先頭の1番片岡は右中間打。一塁ベースを回ってもスピードを落とさず二塁打にした。一塁と二塁では、ゴロ併殺がない分、次打者は楽に打席に入れる。結果的に流れも点も呼び込んだ大きな走塁だったが、片岡は「外野手の守備位置が深かったし、ライトがひざをついて打球を処理していたから」。
前田の本塁打でゆっくりベンチに戻った後、「外野の状態」をナインに伝えたことで、さらにチャンスが広がることになる。四球出塁の松岡は、続く筒井の左前打で三塁を奪った。無死一、三塁の後、結果的に内野失策で勝ち越し、連続暴投で2点差としたが、道大会6試合無失策の白樺守備陣にかけた「足」の重圧が効いた格好。
「足」と別の要素は「目」。西原監督の指示は「ボール球を振らないように」と簡潔なものだったが、ナインは前夜のビデオチェックで白樺投手陣の球の軌道をイメージできていた。追い込まれるまで、ほとんどボール球に手を出さなかった。三回途中からリリーフした2番手大竹口に対し、4イニングスで98球を投げさせ、白樺・戸出監督は「大竹口が疲れさせられたのが痛かった」。
「指示の徹底」は、よく言われる言葉だ。口に出すのは難しいことではないが、焦りが出てきても不思議のない試合展開の間、ナイン全体に意識を行きわたらせるのは、そう簡単なことではない。
「(9年ぶりは)本当に長かったけど、勝てて良かった。選手がよく頑張ってくれた」とゲーム後の西原監督。「初出場と同じ」意識で臨んだが、この1勝はチームに染み込む「したたかさ」のなせる業だろう。本当の初出場ながら、よく鍛えられたチームをつくってきた戸出監督が、ぽつり言った。「高知商さんの『伝統』に力負けしました」と…。(山崎道生)
筒井、前田が一発
両チーム合わせて26安打の打撃戦を制した高知商はつなぐだけでなく、豪快な一発も効果的。7本の長打を放ったが、筒井、前田は2点本塁打でアピールした。
4番筒井の一打は4点を追う三回。松岡のセンターフェンス直撃二塁打にスタンドのどよめきが静まらない初球をたたいた。「高めの真っすぐ。素振りしたような感じだったけど、あそこまで飛んでくれるなんて」と、バックスクリーン右に打ち込んだ当たりに本人が驚いた。
5―7の六回は、本来つなぎ役の2番前田が内角高め直球をレフトスタンドに運んだ。無死二塁から初球は送りバントのサイン。ストライクを見送ってしまい「打て」に切り替わった。走者は暴投で三塁に進んだが、気持ちは「何とか取り返したかった」。そんな一発は「三塁を回って、本塁打に気づいた」。気持ちよくベースを1周した2人は笑顔だった。(山崎道生)
【写真説明】【高知商―白樺学園】6回裏高知商無死三塁、左越えに同点の2点本塁打を放ち、喜ぶベンチを背に一塁を回る前田
県勢、北海道に7連勝
高知商が白樺学園に勝ったことで、本県勢の北海道勢に対する連勝が春夏通じて負けなしの7に伸びた。
1966年の選抜大会で土佐が室蘭工に10―2で勝って以来続く記録で、前回は97年の選手権大会で高知商が旭川大高を下している。
(2006年8月7日付・朝刊)
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