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 明徳 魔の7、8回

7回裏1死満塁のピンチでマウンドに集まる明徳ナイン(春野球場)

 最後の打者が打ち取られた。ネクストバッターズサークルに控えた中本はヘルメットを抱えて突っ伏した。「自分たちの代で1回も勝てなかった。みんなを引っ張っていけなかったのが申し訳なくて…」。あふれる涙を止めることができなかった。

 集中打を再現した。準々決勝、準決勝で見せた序盤のビッグイニング。三回の再逆転が、それだ。しかし四回以降勝手が違った。リリーフ小松を打ちあぐんだ。それが終盤の再々逆転負けにつながった。

 「つらい期間でも頑張って乗り越えれば、その先にいいことがあると信じてやってきたんです」。中本とともに旧チームからのレギュラー、主将永松は目をはらした。

 昨夏、甲子園入りした後、分かった不祥事で出場辞退。その後も別の不祥事が出て、対外試合禁止期間は7カ月間に延びた。「試練」の1年を経て、春季大会で復帰したものの、圧倒的な強さは影を潜めていた。長い“ブランク”の影響は大きかった。

3回表明徳1死一、三塁、永松がレフトに2点二塁打を放ち、3―2と逆転する(春野球場)

 この夏、優勝旗を手にすることはできなかった。しかし、ナインは何も手に入れられなかったわけではない。

 不祥事をきっかけに、選手の方から生活面を見直した。下級生に任せきりだった洗濯などの雑用を最上級生も手伝った。「甲子園へ忘れ物を取りにいく」を合言葉に、チームはまとまった。それは「ともに過ごして支え合ってきた仲間を大事にしてい きたい」(主将永松)思いだ。

 甲子園にはたどり着けなかった。しかし、「きずな」を手に入れた。実はそれは、これからの人生で優勝より価値の出るものかもしれない。

 熱戦を終え、静けさの戻ったグラウンドで明徳ナインは高知商ナインに千羽鶴を手渡した。これからもライバル関係が続く。しかし、今はついさっきまで甲子園を目指して死力を尽くした仲間でしかない。「おれたちの分まで甲子園で頑張ってこいよ」。明徳ナインは高知商ナインを笑顔で送り出した。(山崎道生)

 【写真説明上】7回裏1死満塁のピンチでマウンドに集まる明徳ナイン(春野球場)

 【写真説明下】3回表明徳1死一、三塁、永松がレフトに2点二塁打を放ち、3―2と逆転する(春野球場)

 エース伊勢、夢届かず 7回 右腕が悲鳴、途中降板

 明徳義塾の背番号1伊勢は七回途中降板した。夢に手をかけながらの無念の149球だった。

 エースは最後のチャンスの3年生だった。春先からの右肩痛で連投が難しい感じだった。1回戦の高知、室戸との準決勝と勝負どころを任された。制球に苦しみながらも、粘りの投球で勝利をもぎ取ってきた。

 決勝は一回から飛ばした。相手は強打の高知商。細心の注意を払い、攻めに耐えた投球数は五回で100球を超えた。六回に1失点。七回、かばい続けた右腕が悲鳴を上げた。切れのなくなった球を痛打された。後を託した小戸森もつかまった。

 泣き崩れる小戸森を気遣いながら「悔しいけど力がない方が負けるのが野球」と伊勢。併設中学の3年の夏の全国中学校大会優勝投手は、静かに高校のマウンドを去った。(横田宰成)

(2006年7月27日付・朝刊)


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